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規制当局の視点から見る外国寄付

外国からの政治的干渉を防ぐために、緊急事態下の1976年に制定された「外国寄付規制法(FCRA)」は、インド当局にとって有効な監視ツールとして機能してきました。この法律は、主権国家としての民主的価値観を揺るがすような外国からの寄付を規制することを目的として設けられたものです。

その後、2010年には経済危機の影響を受け、さらに2020年には世界的なパンデミックと、それに伴う寄付の大幅な増加を受けて改正されました。これらの改正は、外国からの寄付を適切に管理し、インドの政治的主権や国際的なアイデンティティを脅かす恐れのある資金を排除することを目的としたものです。

国家が自国の利益を守るためには、外部からの干渉的な動きを未然に防ぐことが非常に重要です。政治的意図を持つ外国からの資金提供は、国家の利益や主権を大きく揺るがす恐れがあります。現代の国際社会における戦略は、武力よりもむしろ、影響力の行使・圧力・威圧・内政干渉といった形で展開されることが増えています。

実際、スリランカやパキスタンで最近発生した政情不安は、外国からの資金が経済や政治を混乱させるリスクを示す好例と言えるでしょう。インド政府は、これら周辺国の危機を受けて、対外政策を定期的に見直し、柔軟かつ戦略的に対応してきました。

その中でも特筆すべき制度の一つが、「外国寄付規制法(FCRA)」です。この法律は、インドに流入する外国からの助成金を長年にわたって監視・規制してきた重要な仕組みです。

FCRAは、特定の個人・団体・企業による外国からの寄付金や接待の受け入れ・利用について規定しており、国家の利益に反する活動にそれらが使用されることを禁止しています。また、本法はインド国内のみならず、国外にいるインド国民、さらにインド国内で設立・登録された企業の海外支社や子会社にも適用されます。

インドでは、COVID-19パンデミックの時期を中心に、国外からの寄付金が急増しました。これを受けて、規制当局の間では、政治的な意図を含む資金流入への懸念が強まりました。現在も、海外から資金を受け取っている団体に対して、各種調査や査察が実施されています。

最近では、FCRA(外国寄付規制法)に基づくライセンスが、違反の疑いにより取り消されるケースが相次いでいます。FCRAや所得税法、関連法令に違反しているとされる団体に対して、当局が厳しい対応を取っているのが現状です。

例えば、ニューデリーを拠点とするあるNGOに対しては、FCRA第13条に基づきライセンスの停止通知が出されました。これは会計帳簿に関する監査の結果によるもので、同団体が外国寄付金の利用報告義務を怠っていたことや、外国資金と国内資金を混同して扱っていたことが指摘されました。これらは現行FCRAの規定に明確に反する行為です。

さらに別の事例では、複数のNGOに対する調査を通じて、FCRA第12条で禁止されている活動の推進に外国資金が使われていたという重大な違反が発覚しました。こうした動きを受け、FCRAの厳格な運用と透明性の確保が、今後ますます求められる状況となっています。

2022年5月、インド中央捜査局(CBI)によって約40件もの強制捜査が実施され、いわゆる“ハワラ取引”が明るみに出ました。調査の結果、外国からの資金受領時にFCRA(外国寄付規制法)のルールやガイドラインを軽視していたことが発覚し、政府関係者を含む20名以上が拘束されました。その中には、一部のNGOの代表者や仲介役とみられる人物も含まれていました。

こうしたFCRA違反は、単に法律上の問題にとどまらず、政治的な意図を含む資金の流入や、脱税といった国の根幹に関わるリスクを内包しています。いずれも、国家の利益や価値観を揺るがしかねない深刻な問題と捉えられています。

そのため、近年のインドでは、外国資金の動きが規制当局の重点監視対象となっており、政治的にも大きな関心を集めている分野となっています。

結論

インドの各機関が外国寄付規制法(FCRA)の規定を正しく理解し、外国からの寄付を受け入れる前に適切に対応しておくことは非常に重要です。加えて、その寄付金の使途や他者への支払いについても、事前にしっかりと分析・計画を立てる必要があります。

FCRAに登録された団体が社会貢献活動などを行う際には、法令遵守を徹底するとともに、関連する書類の整備・保管を日常的に行うことが求められます。また、寄付金の流入に際しては、その背景や目的についても十分に精査し、FCRAの枠組みに照らし合わせたうえで受領判断を行うことが重要です。

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