
OECD BEPS行動計画2 – 実体主義の台頭
OECD BEPS行動計画2 – 実体主義の台頭 本記事では、グローバル課税における実体主義への明確なシフトと、その中で重要な役割を果たすOECD BEPS行動計画2について解説します。さらに、多国籍企業に対しては、リスクの高い事業拠点や国・地域への影響を事前に慎重に分析し、特にインドで事業展開する企業がどのように影響を受けるかを見極めることを促しています。 加速するグローバル化の時代において、国境を越えた税務問題は多国籍企業(MNE)の重要な政治課題となっています。グローバル化は企業の拠点や従業員、技術、知的財産、ノウハウの国際的な移動を促進しますが、それに伴い税務上の争点も増加しています。特に、国境を越えた利益移転や課税ベースの配分は大きな論争を呼んでいます。多くの大手多国籍企業は高い税負担を避けるために利益を低税率国へ移す傾向が見られ、これが各国の税収に影響を及ぼし、グローバルな最低法人税率の導入議論を生む要因となっています。 さらに、1980年代以降、多くの国が自国へのビジネス誘致を目的に法人税率を引き下げており、その結果、税制競争が激化しています。こうした環境の中で、多国籍企業は税優遇措置を受けるために事業構造を変化させ、グローバルな税負担軽減を図るケースが増えています。 本件の特徴は、事業再編後もインドで同様の機能が行われているにもかかわらず、機能分析の結果、これらがサポート活動として扱われた点にあります。再編前は、取引処理業務から得られる収益の100%がインドの事業に帰属し、純利益率50%が適用されていました。そのため、再編前は売上の50%が課税対象となっていましたが、再編後は約2.5%まで大幅に減少しました。 経済協力開発機構(OECD)は、グローバルな税制を実質主義へと移行させ、現行の過度な税競争や課税ベースの移転を終わらせるための包括的な枠組みの構築に取り組んでいます。OECDは2023年から多国籍企業(MNE)に対し最低15%の法人税率を課す歴史的な合意をまとめ、これにより国際的な税競争に歯止めをかけることを目指しています。インドを含む136か国がこの合意に参加を表明しており、これは国際税制における大きな改革であり、最低法人税の導入は15%未満の税率を提示する国へのインセンティブを排除し、法人税の回避を実質的に抑制することを意味します。参加国は140か国中136か国が支持し、ケニア、ナイジェリア、パキスタン、スリランカは現時点で保留しています。 また、OECDはG20諸国の支持を受け、BEPS行動計画2(BEPS 2:ハイブリッドミスマッチ対策の効果の中和)の実施に向けた野心的なスケジュールを示しています。BEPS 2では、グローバルな利益の一部を親会社に帰属させる規定が設けられており、詳細な運用メカニズムは今後整備される予定ですが、多国籍企業は自社のグローバルな税務状況を積極的に分析し、リスクの高い事業部門や管轄地域、関連する税務構造を特定することが不可欠となっています。 この点に関して、BEPS行動計画2で定められた配分のトリガーポイントは以下の通りです。 グループ閾値:グローバル売上高が200億ユーロを超え、かつ利益率(税引前利益/売上高)が10%を超える多国籍企業(MNE); コンポーネント閾値:個別のグループ企業の売上高が100万ユーロ以上(小規模管轄地域の場合は25万ユーロ以上); 重要ポイント: ・インドの均等化課税(イコライゼーション・レヴィ)などのデジタル税は段階的に廃止される可能性がある; ・15%未満の基準税率の管轄地域で活動するグループ事業体は調整の対象となる; ・インドからの海外送金は、源泉税負担軽減のために租税条約の恩恵を受けている場合、高い課税の対象となる可能性がある(STTRルールに基づく); ・BEPS 2の仕組みを反映するため、CbCR(国別報告)関連の報告要件にも変更が見込まれる。 インドの視点から見ると、BEPS行動計画2は主に以下の2点で大きな影響を及ぼすと考えられます。 ・デジタル課税への影響:インドの均等化課税による歳入は約40億ルピーにのぼります。均等化課税の廃止は、インドの歳入面での損失を意味します。 ・15%の最低税率:インドの法人税率は2019年11月に30%から22%へ引き下げられましたが、その効果はまだ十分に現れていません。さらなる法人税率の引き下げは、COVID-19の影響で財政需要が高まる中、経済成長に繋がらず州の歳入減少を招くのではないかと懸念されています。