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ITCを請求するには「税の連鎖」を維持することが不可欠 — オリッサ高等裁判所が確認

本記事では、オリッサ高等裁判所が下した「Safari Retreats Pvt Ltd 他 対 CGST主任委員 他 \[WP(C) No. 20463/2018]」の判決について取り上げます。著者によると、この判決は建設会社が賃貸目的で使用する場合でもITC(仕入税額控除)を請求できる道を開くものであり、歓迎すべき判断とされています。また、この判決はITCの枠組みの再調整と、企業における「税の連鎖」基準の見直しを求めるものでもあると著者は指摘しています。

インドにおける物品・サービス税(GST)の基本的な考え方は、多段階かつ包括的な「消費地課税」に基づく税制であるという点にあります。GSTが消費地課税であるための最も重要な要件は、従来の起点課税とは異なり、税が「消費される地点」で徴収されることです。これに伴い、仕入れたサービスや物品に対してGSTを支払い、その後の販売時にその支払い分の税額控除(ITC)を受けることができますが、最終消費の段階ではITCは請求できません。つまり、ITCは「税の連鎖」が続いている限り請求可能であり、この連鎖が途切れた瞬間にITCの権利は失われることになります。

このITCに関する規定は、上述の原則を中心に構成されており、2017年制定の中央物品・サービス税法(CGST法)第5章に規定されています。CGST法第17条第5項(d)では、固定資産(機械設備を除く)の建設に使用される仕入れ物品やサービスに対するITCを制限しています。該当条文の内容は以下の通りです。

「(5)第16条第1項および第18条第1項の規定にかかわらず、以下のものについては仕入税額控除は認められない。

(d) 課税者が自己のために建設する不動産(機械設備を除く)の建設に用いる物品またはサービス、またはその両方。ただし、その物品やサービスが事業の過程または促進のために使用される場合も含む。」

上述の規定を読むと、仕入れた物品やサービスが固定資産(機械設備を除く)の建設に使用される場合、最終消費であろうと事業継続のためであろうと、ITCは認められないことが明確です。GSTが消費地課税である以上、自己消費のために不動産が建設される場合にはITCを利用する余地はありません。しかしながら、建設された不動産自体が事業の促進に資する「入力」として用いられる場合には、「税の連鎖」が途切れていないため、こうした建設物に対してもITCが認められるか否かが問題となります。

この点に関して、最近オリッサ高等裁判所は、CGST法第17条第5項(d)の合憲性について問われました。具体的には、建設された建物がさらに賃貸などの形で事業に活用される場合、税の連鎖が継続しているためITCを認めるべきかが争点となりました。

M/s Safari Retreats Pvt Ltd 他 対 中央物品・サービス税主任委員 他 \[WP(C) No. 20463/2018] の事件では、申立人がテナントや賃借人に貸し出す目的でショッピングモールの建設事業を行っていました。申立人は、建築資材、アルミニウム、電線、塗料、エレベーター、エスカレーター、空調設備、チラー、発電機セット、建物自動化システムなどの入力物品および建築設計、法務、専門サービス、技術サービスなどの入力サービスに対して合計3億4,400万インドルピーのITCを保有していました。申立人は、固定資産の賃貸目的での建設に対してITCを認めていないCGST法第17条第5項(d)の合憲性に異議を唱えました。

申立人は主張の一つとして、建設された不動産が賃貸のためであれば、賃貸はCGST法スケジュールII第2(b)項の「サービスの提供」に該当するためITCを認めるべきだと述べました。また、本件のように賃貸を目的とした建設であれば「税の連鎖」が途切れていないとして、ITCが許されるべきだと論じました。さらに、ITCを認めないことは建物の競争力を損ない、入力段階での課税と賃料収入に対する二重課税を招くと指摘しました。申立人はまた、最高裁判所のEicher Motors Ltd 対 インド連邦 \[(1992) 2 SCC 361] の判例を根拠として挙げました。

オリッサ高等裁判所は申立人の主張を認め、GSTの目的が税の均一な課税および多重課税の防止であることを強調しました。したがって、CGST法第17条第5項(d)の規定はGST法の目的に反していると判断しました。最高裁判所のEicher Motors判決を踏まえ、賃貸目的で建設された建物に関しては、申立人が支払った入力物品・サービスにかかるGSTの税額控除を認めました。ただし、第17条第5項(d)の規定自体の合憲性については、違憲とは認めず有効と判断しました。

結論

オリッサ高等裁判所の判決は歓迎すべきものです。本判決の示した原則に鑑み、賃貸目的で建物や複合施設の建設に携わる企業は、ITCの体系を見直し、ITCを最大限に活用できるようにするとともに、ITCにおける「税の連鎖」要件が満たされているかを慎重に評価することが不可欠です。

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