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海外からの寄付を受け取る際の注意点!

グローバル化が進む現代、世界の片隅で起きた出来事が他方に波紋を広げています。こうしたグローバル化の影響で、慈善資金の国際的な移動も活発化しています。過去4年間で、インドの非政府組織(NGO)は約5兆ルピーの外国寄付を受け取っています。高度なITインフラの活用により、インドの規制当局はこれらの受領状況をより正確に把握できるようになっており、企業にとっては1976年制定の外国寄付規制法(旧FCRA)を理解し、遵守することがますます重要になっています。

FCRAの背景

旧FCRAは、1976年8月5日に、政治的に狙われた外国からの寄付を規制し国益を守ることを目的として施行されました。当時の非常事態宣言下で、「外国寄付や外国からの接待の受け入れと利用を規制する」ことが趣旨とされていました。その後、1984年に改正され、外国寄付の受領者の範囲が拡大されるとともに、外国寄付を受け取る団体の登録制度が設けられました。さらに、1976年の旧FCRAは廃止され、2011年5月1日より新たに「外国寄付規制法(FCRA)2010」が施行されました。

2020年にはFCRAの各条項を改正する「外国寄付規制改正法(Amendment Act)」が成立し、外国寄付の受け入れ、利用、譲渡、処分、報告における透明性と責任を強化、規制当局の監督権限を大幅に強化することを目指しました。

2022年4月8日、インド最高裁はこの改正法の合憲性を認める判決を下し、改正内容の範囲についても明確化しました。このような背景を踏まえ、本記事ではFCRAおよび改正法に関する未解決の疑問点のうち主要な三点に焦点を当て、最近の最高裁判決の分析も併せて紹介します。

FCRAの枠組み

FCRAは、インド国内にいる個人や団体が外国からの寄付金や接待を受け取る際の受領、譲渡、処分および報告を規制しています。第3条から第6条までは、政治団体や政府職員などによる外国寄付の受領に関する規定が定められています。

改正前の第7条では、外国寄付を受け取った者がFCRAに基づく登録をしていない第三者に寄付を譲渡することを禁止していましたが、改正後は受領者がいかなる相手にも外国寄付の譲渡を一切禁止する内容に強化されました。インド最高裁もこの改正の正当性を認めており、資金の誤用を防ぎ、受領者の責任を明確にすることを目的としていると述べています。

第8条では、外国寄付を受けた者は、その寄付金を受け取った目的に沿って使用しなければならないと規定しており、これにより外国寄付の不正使用を防ぎ、目的に沿った適切な利用を確保しています。

改正法が施行前に受領した外国寄付に適用されるか?

改正により、第7条は外国寄付の第一次受領者から他の者への譲渡を完全に禁止する規定となりました。この規制は、その後の資金利用において実務上の課題を生じさせています。

まず、この改正が遡及的に適用されるかどうか、すなわち改正法施行前に受領した寄付にも適用されるのかが問題となります。最高裁判所は繰り返し、法律の改正は特に明記されない限り、原則として将来に向けて効力を持つ(遡及適用されない)と判断しています。また、最高裁は実体法規は原則として将来効力を持つと示しています。

これらの判例と基本原則を踏まえると、第7条の実質的な改正を含みながら遡及適用を明示していない改正法は、遡及的ではなく将来効力を持つと解釈されるのが妥当です。したがって、改正法による譲渡禁止規定は、施行前に受領した外国寄付には適用されないと考えられます。

第三者(資金受領者以外)の負債返済に外国寄付金を利用できるか?

第7条の改正は、外国寄付金の不正利用を防ぐという誠実な意図のもとに行われたものですが、実務上、意図しない課題を生む可能性があります。

多くの場合、外国寄付金の受領者はその資金を本来の目的に使用できるものの、共同の目標達成のために他組織と連携するケースもあります。例えば、草の根団体は直接外国寄付金を得る実績がないため、既存の登録団体と協力して共通の目的を達成することがあります。この場合、既存の登録団体が仲介役として外国寄付金を受け取り、連携先の団体が負担した費用を支払うことは可能かという疑問が生じます。

なお、第7条の改正は、インド憲法第14条および第19条に違反するとして異議が申し立てられました。申立人は上記のような実務上の困難を指摘し、改正の無効を求めました。改正は合憲と判断されたものの、最高裁は改正の適用範囲について明確な説明を行いました。裁判所は「譲渡(transfer)」と「利用(utilisation)」の違いを区別し、外国寄付金が本来の目的のために使用されている限り、第7条の厳格な適用対象とはならないと述べています。

これらを踏まえると、FCRAの登録団体が外国寄付金を受け取り、連携先の団体が負担した費用の支払いに充てる場合、その行為は第7条に定める「譲渡」ではなく、第8条に定める「利用」とみなされると主張できます。

外国寄付金を受領する前、または団体登録前に発生した費用の支払いに外国寄付金を利用できるか?

FCRA第8条では、外国寄付金は受領目的に沿って利用されるべきと規定されています。理想的には、以下の順序で事柄が進行すると考えられます。(1)法に基づく登録、(2)外国寄付金の受領、(3)特定目的のための費用発生、(4)外国寄付金の利用。しかしながら、費用が外国寄付金の受領や登録前に発生する場合もあります。

FCRAは、外国寄付金の受領後にのみ費用が発生しなければならないとは定めていません。重要なのは、外国寄付金が承認された目的のために適切に使われることです。費用の発生時期と寄付金の受領時期の前後関係が異なっても、実質的な問題とはならないと考えられます。この見解は、前述の最高裁判決の趣旨にも沿っています。

また、FCRAでは、外国寄付金の受領および利用に関する詳細を開示する定期報告の提出など、十分な監査・報告体制も整えられています。

結論

FCRAの規定は、政治的意図を持つ資金の流入を抑制することを目的としており、そのために規制当局には強化された権限が付与されています。近年、インドの規制当局はFCRAライセンスの取り消しや、規定違反による寄付金受領申請の却下を行うケースが増えています。このように、規定の実務上の運用には課題があり、正当な外国寄付金を受け取る団体にとっては不利益となる場合もあります。したがって、寄付金を受領する側は、外国からの寄付を受け入れる法的規定やその後の処理ルールを十分に理解・分析することが不可欠です。

また、持分の譲渡内容、支払い条件、リターンなどの要素についても詳細に検討し、それらを踏まえた上で意思決定を行うことが重要です。

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